『JAおおいた中部事業部水耕せり部会』
部会長 甲斐 崇 さん
「せりはのびしろのある野菜と思う」と結婚を機に脱サラ・就農した甲斐さん
春の七草のひとつとして知られるせり。大分県のせりの生産量は宮城や茨城に続く全国3位だが、水耕栽培に限ってみれば日本一。県内ではかつて日田市天ヶ瀬のみで生産されていたが、25年ほど前から大分市内で水耕でのせり栽培が手がけられるようになった。
現在は7軒の農家が切磋琢磨しながら、年間10万ケースの出荷を目標に栽培に取り組んでいる。
パネルに植え付けたせりを手作業で収穫。ビニールハウス内では、冬の収穫作業が快適
『JAおおいた中部事業部水耕せり部会』部会長の甲斐崇さんは、もともとサラリーマン。結婚を機に、地域のみつばづくりの先駆者である義父のもとで農業を始めた。せり栽培に取り組んだのは、25年ほど前。県内では競合が少なく、みつばよりも単価が高かったことが理由だ。
当初は発芽率が低かったり、肥料の調整が難しかったりと苦労したという。研究や改善を重ね続け、ここ数年は出荷量が順調に増加。水耕栽培ならではの柔らかく、苦味の少ないせりは評判も上々で、年明けの七草粥の時期だけでなく、最近では夏も問い合わせが多くなってきた。とはいえせりは冬の野菜、本来夏場は管理が難しく思うように収穫量が得られない時期なだけに、要望に応えられるよう、設備を整えるなどして収穫量アップを目指している。
主に関東・関西、福岡に出荷しているが、「もっと地元で消費してもらいたい」という思いは強い。どうやったらせりの魅力を広め、定着させられるかを甲斐さんは日々模索している。
食感が柔らかく、アクがないのが特徴の水耕せり。サラダなど生でもおいしく味わえる
せりの楽しみ方はさまざま。そのままサラダにしたり、焼肉や鍋の際に肉を巻いていただくのもおすすめだ。ほどよい香りと彩りで料理にアクセントをつけてくれるせり。カロテンや葉酸、ビタミンCなどを豊富に含まれており、シャキッとした食感も魅力の野菜を、季節を問わず楽しんでほしい。
周年栽培が可能な水耕栽培。パネルの下には肥料を混ぜた地下水が張ってある
春の七草のひとつとして知られるせり。水耕せりは全国的にも珍しく、出荷量は大分県が日本一